3番目+

誰でも大好き

ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド 3/20 17:00公演@日生劇場

2月終わり頃から公演中止や上演延期等が始まっており、それでも政府の自粛要請のタイミングとかで3月に入ってから公演再開するところがチラホラあり(結果的に期間限定上演になってしまったわけだが)、そんな中1週間程度の公演再開期に運良く観劇出来た中の1作。
この日も午前中に同じ東宝管轄である帝劇の当日中止案内が出ており、まじでスレスレ感がすごかった。
本来は1週間早く公演が始まっていたはずが、この日のマチネが初日初回となり、わたしがもともとチケットを取っていたこの回は2公演目だった。
結局全部で11公演?だかなんかしか上演出来なかった上に、おそらくもともとわりと不入り(普通に日本人ウケしないに決まってる物語内容と広報活動が微妙だったせいだと思うが)、且つ上演している回でも払い戻しを受け付けてたので、この演目を観た人間自体が相当少数派であろうという事で、記録を残すべきだと思いました。
なお実は公演時間を勘違いしており、冒頭10分程度遅刻したのですがwどうやら子供たちが歌ってただけっぽい?のでまあいっか~判定です。

簡単で雑なあらすじ
・1950年代のアメリカのド田舎
・信仰心が篤く平和な人々や田舎に不満や鬱屈を抱える若者が暮らす小さな街
・母を亡くしたばかりの少女スワローとその弟妹の家の納屋に、傷だらけの脱獄囚が逃げ込んでくる
・彼を見つけた姉弟たちは彼の手足や体の傷を見てキリストの再来と信じ込み、脱獄囚は姉弟の信心を利用してその納屋に隠れ住むことに
・幼い弟妹達は「誰にも内緒」だと言われた彼の存在を友人たちには話してしまうが、子供たちは親には言わず、自分たちだけの秘密として偽キリストに懐いていく
・鬱屈を抱えた若者カップルエイモスとキャンディはこの町から出ていくことを画策している
・町の人々は信心深いが、その一角で蛇使いを教祖としたカルト的新興宗教も出現し始めている
・「脱獄囚がこの町に逃げ込んできた」という話は大人たちの間ではすぐに広まり、見つけ次第すぐに殺してやる、的な悪魔狩りの様相がどんどんヒートアップしていく
・脱獄囚はスワローの信心を利用して、自分が逃げてくる途中で線路わきに隠した銃を中身を見ずに取りに行くことを要求し、スワローは自分のことを好いている幼馴染みエイモスに手伝ってもらいそれを実行する
・その際、キリストを納屋にかくまっていることをエイモスに話してしまう
・それを蛇使いカルト宗教信者奴がこっそり聞いていた
・スワローの弟は死んでしまった猫をキリストなら生き返らせてくれると思い依頼するが、当然その願いは叶えられることなく、彼はキリストではないと疑い始め、蛇使いカルト宗教について行ってしまう
・弟はスワローとエイモスに助け出されるが、カルト奴がスワローに嫉妬したキャンディに、スワローが納屋に匿っている脱獄囚の話をする
・銃を手にした脱獄囚はまた新たな場所へ逃げようとするが、自分を大切に扱ってくれたスワローや子供たちのおかげで、人間らしい心を取り戻しつつある
・幼馴染みのオンナに脱獄囚の隠れ場所を教えられ、大人たちは武器を持ってスワローたちがいる納屋に向かう
・納屋に到着するとその周りを「キリストは自分たちが守る」と奮起した子供たちが囲んでおり、大人たちは手が出せない
・中では死んだ母を生き返らせることが出来ない彼は本当はキリストではないと既にわかっている脱獄囚にスワローが「自分を人質として連れて行ってほしい」と頼んでいる
・脱獄囚はスワロー1人を納屋の外に出し、自分は中で納屋に火をつける
・納屋は燃え落ちるが、その中には死体も人間が居た形跡もなく、大きな梁だけが十字架のように残っていた
おしまい

一応「少女の無垢な信心」とか「獣のような脱獄囚が自分に優しくしてくれた純粋な少女にほだされ人間の心を取り戻していく」といったようなところが感動を呼ぶ、というテイのお話らしいんですけど(たぶん)(知らんが)、わたしは観てる最中からとにかく不気味で怖ろしくおぞましくずっとぞわぞわしていた
脱獄囚のことを状況やこじつけでキリストと信じ込む無垢で無知な娘
しかもそれが本来原作映画では「少女」と呼べる10歳以下くらいの年齢設定だったのに、舞台版になるにあたって脱獄囚とラブロマンスの香りをさせることが出来る程度の年齢に引き上げられている(その設定変更はBWでミュ化されたときから)
つまりある程度性的対象として見られる年齢になっているところ
そういう白痴(語弊アリ)みたいなオンナをある意味洗脳して、自分の要望の通り動かす犯罪者
その周りをファミリーミュみたいな明るい朗らかな歌を歌いながら踊る未就学児童を含むローティーン以下の子供たち
今の日本の女子アイドルとしておそらく最高レベルの人気を誇る生田が、観劇しているファンの前で、白痴娘役として、素性のわからんあからさまに怪しすぎる年上の男(※ただし超イケメン)に対して「あなたの仰る事なら私はなんでもします」とか言っちゃうという
こ、こ、こ、コエーーーー!ヤベーーーーーー!!に尽きる
「俺が本当は人殺しだったらどうする」と言った偽キリストに対して「(あなたがキリスト様なら)私は赦します」とか言っちゃう、「殺人犯に赦しを与える生娘」っていう構図とかも背筋がゾゾッとしたし
偽キリストに母を生き返らせてくれるようお願いしたのにいつまでも叶えてくれないことに対して、彼は何も言っていないのに最終的に自分たちで勝手に「お母さんはこれ以上病気で苦しまなくて済んだわけだから死んだのは良いことだった」と、「あのキリストは本物である」ことや「誰も悪くない」こと、自分たちに都合の良い考え方を正当化するためのこじつけ解釈を作り上げたところも典型的なアレだったし
脱獄囚をキリストと信じ込む子供たちが超無邪気に「ねえおはなしして!」とかって彼にお説法を要求して、もちろんそんなものが出来るわけない偽キリストは適当な作り話をその場ででっち上げ適当に話し「これでおしまい」の後、子供たちに「その教えは?」と詰め寄られる場面のおそろしさもすごかったですね

とはいえ実際この物語に「悪者」は登場しないし「理不尽な不幸」や「ものすごく痛い・つらい目にあう」ことも一切ないんですよね。
夜中にバイクに2ケツで銃を取りに行ったスワローとエイモス、人気のない線路脇のトンネルで二人っきりでも自分を好いている男から襲われたりしないスワロー、銃を回収した後のちょうどいいタイミングで大人たちにみつかり、スワローを連れ出したと誤解されたエイモスは怒られたけどスワローは大人たちの車に乗せてもらってラクラク帰宅、回収した銃は誰にも見つかることなく無事に脱獄囚に渡すことが出来るという平和な世界。。。
こういうお話において「ストレスを感じる辛い引っ掛かり」が全くないの、意外性あってなにげにけっこうアリだと思うw
その上で「本当は母が死んだときそんなに悲しくなかった」とのたまうスワローの心の闇というか、本当にこの町で鬱屈して病んでたのはおまえだったんか~、みたいなのはちょっと良かった
良い意味で良かった
知識レベルが高くない平和で信心深い人間たちで構成されたムラ社会とか蛇使いカルト新興宗教は50年代アメリカのド田舎としてはすごいリアリティ
魔女たちにチラっと話をしたらすぐに「それっていつの時代の話?」と訊かれ「50年代」と言ったら「あ~、その時代は一番そういう新興宗教が田舎で跋扈してたときですもんね」とか言われて「き、教養~!」と思ったし、「素性の知れないあやしい男を頭っから信じ込む無垢で無知な信心深い娘」という超簡単な説明だけですぐ「おぞましい…!」って言ってくれて、さすがわかってるゥ~!とも思った

観劇後ツイットしたけど「普通~にヤベーお話だったので逆に意図がわからない」し、ずっと\その教え~は?/\その教え~は?!/\その教え~は?!?!?/(※)って思ってるよ・・・
※偽キリストによるオチの無いデタラメお説法に対して子供たちが「このお話の教訓は?」と詰め寄るシーンの歌、普通に超絶怖面白いので激頻出ミュネタにしたいのに観劇総人員数があまりにも少ないせいでわかってくれる人が圧倒的少数すぎるという切ない話

ただやっぱ白井晃演出はなんかこういう「引っかかる」とか「後々まで引きずる」とかそういう部分で、なっんか好き~というかわたしと相性が良いんではなかろうか、と感じている…
ペールギュントもアダムスもホイッスルもなんだかんだ忘れ得ぬ作品ですものね


一応この状況下での上演という事で、劇場の対策についても記録しておきますが
・入場時は カメラによるサーモチェック→手にアルコールを噴射→チケもぎり
・スタッフは全員マスク
・私の席は前通路通路横、且つ隣は2席空きだったのでほんとにポツンとしていた
・換気がすごくてずっと足元がスースー
・客の入りは7~8割程度?かな?
・昼に行ったアナスタシア@オーブに比べると客層も若いし若干民度低い感じはあり
・客のマスク着用率は8~9割
・休憩時間10分延長してたけど、客の入りも少なかったのでトイレ大混雑にはなってなかったというかなんならわりとみんな時間を持て余していた
・ロビーの細長い窓が開いている!この窓開くように出来てたんだ、、という驚き
・飲食販売は無し
・客は自分で持ってきたものをロビーで食べたりは結構していた
・館内あちこちにアルコール消毒液あり、客もそこそこ使っていた
・まさかの喫煙室営業中で使用者も結構多いw
・終演後はスタオベありでいつものようにブラボーおじさんも居たしわりとみんなヒューヒューキャーキャー声出ししていた

【その後の話】
観劇日以降、地味にドキドキしながら生活していましたが2週間経っても発病はしませんでした。
当時は「対策さえちゃんとしてれば劇場無罪!」って言ってましたが、まあ今となっては「避けるべき”密”環境」だな、と感じますね。
今後「〇日以上感染者数がゼロの日が続けば大規模イベント開催も可能」、みたいなガイドラインも出てたかと思いますけど、普通に観劇を楽しめるレベルの日常生活が出来るようになるのはいつになるんでしょうかねえ。